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日別アーカイブ: 2025年11月4日

谷崎軌道の雑学講座

皆さんこんにちは!

神奈川県横浜市を拠点に軌道工事などを行っている

谷崎軌道、更新担当の中西です!

 

 

~軌道工事とは何か ~

 

私たちが毎日乗っている鉄道は、時速100kmを超える高速で人と物を安全に運び続けている。
その足元を支えているのが「軌道工事」という分野である。
鉄道工事の中でも軌道は、構造物でもあり精密機械でもあり、わずか1ミリの誤差が安全性や乗り心地に影響する。

本稿では、軌道工事の基本構造、施工工程、求められる精度、そして現場の実際について解説する。


1. 軌道の役割と基本構造

鉄道の軌道は、列車の走行を支える最も重要な部分であり、以下のような層で構成されている。

  • レール(鋼製。車輪を受ける)

  • まくらぎ(レールを保持し荷重を分散)

  • バラスト(砕石。衝撃吸収・排水機能)

  • 道床(地盤。列車荷重を支える基層)

この各層が一体として働くことで、列車の巨大な重量を支え、かつ安定した走行を実現している。
軌道工事とは、これらの要素を設計通りに構築し、狂いなく整える作業の総称である。


2. 軌道工事の種類

軌道工事には目的に応じて複数の種類がある。代表的なものは以下の通り。

種類 内容
新設軌道工事 新線建設や延伸区間の敷設
更新工事 老朽化したレールやまくらぎの交換
改良工事 線形改良、騒音・振動対策など
軌道整正工事 レールの高さ・方向・通りの補正
軌道保守 日常・定期点検、部分補修

軌道工事の多くは、列車の運行を止められないため、夜間や終電後に行われる。
作業時間はわずか3〜4時間。その間に重機を搬入し、レール交換、バラスト整正、機器撤収まで完了させなければならない。
この「限られた時間と高精度」が軌道工事の最大の特徴である。


3. 軌道工事の施工フロー

典型的な軌道更新工事の流れを見てみよう。

  1. 現地測量(軌道中心・高低・通り測定)

  2. 既設レール撤去

  3. まくらぎ交換

  4. 新レール据付・接合(溶接またはボルト締結)

  5. バラスト撒出し

  6. 軌道整正(タンパーによる高さ・方向調整)

  7. 通り確認・試運転

  8. 検査・引渡し

どの工程にも“基準値”が存在し、たとえばレール通りは±1mm、高低差は±2mm、ゲージ(軌間)は1067mm±2mmといった精度が求められる。
これを暗闇の中、重機と人の連携で実現するのが軌道技術者の腕の見せ所だ。


4. 軌道工事における精度管理

軌道工事で最も重要なのは、精度の維持である。
現場では測量機器(トータルステーション、レールゲージ、レベル)を用いて、施工中・施工後の通りを逐次確認する。

また、最近ではICT施工が導入され、3Dデータとレーザー測量で自動整正が可能になりつつある。
しかし、最後の「1mm」を決めるのは人の感覚である。現場監督や軌道班長の経験が、最終の仕上がりを左右する。


5. 安全と連携

軌道工事は、列車の運行ダイヤに直結するため、安全と時間厳守が絶対条件である。
作業指揮者・保安要員・重機オペレーターが密に連携し、作業区域に列車が進入しないよう、徹底した保安管理を行う。
1つの確認漏れが重大事故に直結するため、「ダブルチェック」「声出し確認」が徹底されている。


6. まとめ

軌道工事は、単なる「線路の工事」ではない。
1ミリ単位の精度と、数十人が一体となる作業の中に、日本の鉄道の信頼性が宿っている。
安全・精度・時間。この3つを守り抜く現場の努力こそが、見えないところで社会を支えているのである。