皆さんこんにちは!
神奈川県横浜市を拠点に軌道工事などを行っている
谷崎軌道、更新担当の中西です!
私たちが毎日乗っている鉄道は、時速100kmを超える高速で人と物を安全に運び続けている。
その足元を支えているのが「軌道工事」という分野である。
鉄道工事の中でも軌道は、構造物でもあり精密機械でもあり、わずか1ミリの誤差が安全性や乗り心地に影響する。
本稿では、軌道工事の基本構造、施工工程、求められる精度、そして現場の実際について解説する。
鉄道の軌道は、列車の走行を支える最も重要な部分であり、以下のような層で構成されている。
レール(鋼製。車輪を受ける)
まくらぎ(レールを保持し荷重を分散)
バラスト(砕石。衝撃吸収・排水機能)
道床(地盤。列車荷重を支える基層)
この各層が一体として働くことで、列車の巨大な重量を支え、かつ安定した走行を実現している。
軌道工事とは、これらの要素を設計通りに構築し、狂いなく整える作業の総称である。
軌道工事には目的に応じて複数の種類がある。代表的なものは以下の通り。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 新設軌道工事 | 新線建設や延伸区間の敷設 |
| 更新工事 | 老朽化したレールやまくらぎの交換 |
| 改良工事 | 線形改良、騒音・振動対策など |
| 軌道整正工事 | レールの高さ・方向・通りの補正 |
| 軌道保守 | 日常・定期点検、部分補修 |
軌道工事の多くは、列車の運行を止められないため、夜間や終電後に行われる。
作業時間はわずか3〜4時間。その間に重機を搬入し、レール交換、バラスト整正、機器撤収まで完了させなければならない。
この「限られた時間と高精度」が軌道工事の最大の特徴である。
典型的な軌道更新工事の流れを見てみよう。
現地測量(軌道中心・高低・通り測定)
既設レール撤去
まくらぎ交換
新レール据付・接合(溶接またはボルト締結)
バラスト撒出し
軌道整正(タンパーによる高さ・方向調整)
通り確認・試運転
検査・引渡し
どの工程にも“基準値”が存在し、たとえばレール通りは±1mm、高低差は±2mm、ゲージ(軌間)は1067mm±2mmといった精度が求められる。
これを暗闇の中、重機と人の連携で実現するのが軌道技術者の腕の見せ所だ。
軌道工事で最も重要なのは、精度の維持である。
現場では測量機器(トータルステーション、レールゲージ、レベル)を用いて、施工中・施工後の通りを逐次確認する。
また、最近ではICT施工が導入され、3Dデータとレーザー測量で自動整正が可能になりつつある。
しかし、最後の「1mm」を決めるのは人の感覚である。現場監督や軌道班長の経験が、最終の仕上がりを左右する。
軌道工事は、列車の運行ダイヤに直結するため、安全と時間厳守が絶対条件である。
作業指揮者・保安要員・重機オペレーターが密に連携し、作業区域に列車が進入しないよう、徹底した保安管理を行う。
1つの確認漏れが重大事故に直結するため、「ダブルチェック」「声出し確認」が徹底されている。
軌道工事は、単なる「線路の工事」ではない。
1ミリ単位の精度と、数十人が一体となる作業の中に、日本の鉄道の信頼性が宿っている。
安全・精度・時間。この3つを守り抜く現場の努力こそが、見えないところで社会を支えているのである。